Ringside Room

ボクシング観戦記。簡単な感想を書いています。タイトルマッチ、話題の試合中心です。

バンタム級

WBO世界バンタム級王座統一戦 ゾラニ・テテ VS ジョンリエル・カシメロ

2019年11月30日
イングランド バーミンガム バーミンガムアリーナ

○暫定王者 ジョンリエル・カシメロ[3R TKO]正規王者 ゾラニ・テテ●
テテが4度目の防衛に失敗。カシメロが王座統一し2度目の防衛に成功。

カシメロVSテテ
見事にテテを倒しきったカシメロ(左)

 テテとカシメロによる団体内王座統一戦。テテはこの先のことばかり気にしているようだが大丈夫だろうか。カシメロは確かな実力を持つ強打者。テテは安全にアウトボクシングをするだろう。カシメロがインファイトで当てられるかがカギになる。

 立ち上がりから、テテがロングレンジからジャブを突いてカシメロに近づかせない。カシメロは踏み込んで近距離戦に持ち込みたいところ。だが、テテのリーチに苦労し、踏み込んだ時の左のショートも警戒しているのか、容易に近づけずにいる。
 大方の予想通りの展開で進むかと思われたが、3ラウンド、カシメロが強引に近づいて、一気に距離をつぶして放ったボディから、さらに側頭部への右フックでテテを倒した。再開後もラッシュを仕掛けて再びダウンを奪う。テテが辛うじて立ち上がり、また再開。しかし、カシメロがコーナーに詰めて左フックを当てて、テテが崩れたところでレフェリーが割って入った。

 カシメロがTKO勝ちで王座を統一した。テテの戦い方はいつも通りで盤石に思えたが、カシメロの踏み込む勇気と自信をもって放った強打が、テテを打ち砕いた。試合後の強気のインタビューも良い。

WBAスーパー,IBF世界バンタム級王座統一戦 ノニト・ドネア VS 井上尚弥

2019年11月7日
日本 埼玉県さいたま市 さいたまスーパーアリーナ

WBAスーパー,IBF王座統一戦兼、WBSS決勝
○WBAレギュラー,IBF王者 井上尚弥[判定 3-0]WBAスーパー王者 ノニト・ドネア●
ドネアがWBAスーパー王座2度目の防衛に失敗。井上がWBAレギュラー王座3度目、IBF王座初防衛に成功。

ドネアVS井上
激闘を制した井上(左)

 スーパーライト級に続きバンタム級のWBSSもようやく決勝を迎えた。井上がドネアに引導を渡すのか。ドネアが大きな壁として立ちふさがるのか。いずれにせよ井上がとらえればドネアは倒れるだろうし、ドネアがカウンターをまともに当てれば井上が倒れる。

 序盤、井上の連打もドネアの左も速い。しかし、2ラウンド、ドネアの左フックで井上が右瞼を切ってしまう。井上のパンチも当たっているが、ドネアのプレッシャーに若干押され気味だ。

 中盤、井上がドネアのカウンターを警戒しつつ、右を当ててぐらつかせた。そして徐々に井上がスピードで上回り始める。ドネアは相打ちも厭わずの姿勢で攻勢をかけてくる。

 終盤、ドネアの強打で井上がぐらつく。だが、打たれつつも井上が押す。そんなギリギリの攻防の中、11ラウンドに井上の左ボディでドネアがダウン。12ラウンドも紙一重の攻防が続いたが、なんとか井上がしのいだ。

 判定で井上の勝利となりWBSS制覇。今日の井上は流血の影響からか鋭さが消えてしまった。それでもトラブルを抱えつつ、その時出来ることを冷静に選択してドネア相手に勝ち切ったことはめちゃくちゃ大きい。井上の様に的確な判断能力と冷静さを持っているファイターは意外と少ないと思う。
 ドネアは全盛期と比べるとスピードは落ちたかもしれないが、類稀なるカウンターセンスとパワーはやはり健在だ。今回はいつものドネアとは違う異質な強さを感じた。バーネット戦や、ヤング戦とは比較にならないほど強かったと思う。

 これでWBSSは2階級が終焉を迎えた。スーパーライト級の決勝も素晴らしい激闘だったが、バンタム級の決勝も最終決戦に相応しい熱戦になった。
 

WBC世界バンタム級王座統一戦 ノルディーヌ・ウバーリ VS 井上拓真

2019年11月7日
日本 埼玉県さいたま市 さいたまスーパーアリーナ

○正規王者 ノルディーヌ・ウバーリ[判定 3-0]暫定王者 井上拓真●
井上拓真が暫定王座初防衛に失敗。ウバーリが正規王座2度目の防衛に成功し王座統一。

ウバーリVS拓真
パワフルな連打を放ったウバーリ(左)

 団体内の王座統一戦となるこの一戦。ウバーリは拓真にとっては厳しい相手だと思われる。ウバーリにとってはウォーレンとやってきたことを考えると、拓真はまだやりやすい相手と言えそうだ。

 1ラウンドから拓真は相手のパンチが良く見えていて距離感も良い。しかし、その中でもウーバーリが強打を放ったり、連打で押し込んだりして、4ラウンドには左の強打でダウンを奪った。

 ダウンを奪ったウバーリだが5ラウンド以降も割と慎重。一気呵成に攻めるのではなく冷静に相手を見ながらプレッシャーをかける。拓真は後手に回りがち。

 相手が出たところに合わせるのは拓真の方が上手かったように見えたが、終盤に入るとウバーリも拓真のタイミングを掴んだ。多少の被弾を厭わず攻めてくるウバーリが強い。拓真は最終ラウンドに見せ場を作ったが、勝負をかけるには遅すぎた。

 判定でウバーリの勝利。拓真は相手の様子を見て合わせすぎたか。ウバーリは同じ軌道の連打をあまり見せなかったので、そのあたりが合わせようとする拓真を上回っていたように思う。

WBC米大陸,NABOバンタム級タイトルマッチ ジョシュア・グリアJr VS アントニオ・ニエベス

2019年10月26日
アメリカ ネバダ州リノ リノ・スパークス・コンベンションセンター

○王者 ジョシュア・グリアJr[判定 3-0]挑戦者 アントニオ・ニエベス●
グリアがWBC米大陸王座2度目、NABO初防衛に成功。

グリアVSニエベス
辛勝したグリア(右)

 各団体でランキング入りしているグリアが登場。群雄割拠のこの階級で世界へアピールする試合をしたいところ。ニエベスにとっても世界を手繰り寄せるチャンスとなる。

 前半、グリアが先手を取りながら連打を浴びせていく。見栄えはグリアの方が良いかもしれないが、有効打では互角だろう。ニエベスも絶妙なタイミングで強打を入れている。とりわけ4ラウンドのカウンターの左フックは強烈だった。

 後半はグリアが上下に連打を打ち分けて攻めていく。ニエベスも返すが後退気味。グリアは最終ラウンドにダウンしてしまったが、前に体重が乗ったところをニエベスが上手く右フックでひっかけた形だ。

 判定でグリアの勝利。ポイントは僅差だった。ニエベスもグリアと同等の実力だと思う。グリアは今の実力からもうひと伸びしないと、世界タイトル争いは厳しいかもしれない。

WBO世界バンタム級暫定王座戦 ジョンリエル・カシメロ VS セサール・ラミレス

2019年8月25日
フィリピン メトロマニラ サンファン サンアンドレス・シビック&スポーツセンター

○王者 ジョンリエル・カシメロ[10R KO]挑戦者 セサール・ラミレス●
カシメロが初防衛に成功。

カシメロVSラミレス
パワーに活路を見出したカシメロ(右)

 エスピノーサとの暫定王座戦を制してタイトルを獲得したカシメロの防衛戦。カシメロの強さは折り紙付き。ここは勝ってテテとの統一戦の機運をさらに盛り上げたいところ。

 序盤、ラミレスが丁寧にジャブを出している。カシメロは粗さが目立つが、3ラウンドにはタイミングよく左フックを合わせてダウンを奪った。ラミレスは同じタイミングでスリップしていて少し不運だった。

 中盤から試合が激しさを増してくる。カシメロがタイミングと、勢いで任せの攻めで2度ほどダウンを奪った。ラミレスは倒されてもダメージをほとんど見せず丁寧に攻撃し、カシメロの動きを一瞬止めるようなパンチも放っている。ダウンの差以外は一進一退の攻防戦だ。

 9ラウンド、ラミレスが多彩なコンビネーションをかなりクリーンヒットさせている。しかし、カシメロにはやはり1発があり、強烈な左フックで流れを変えた。そして迎えた10ラウンド、ごり押しで攻めに出て最後は右ストレートでラミレスをキャンバスに沈めた。

 鮮烈なKO劇でカシメロの勝利。結果も内容も圧倒的だったが、今回のカシメロの動きはあまり調子が良いようには見えなかった。それ故思わぬ激闘になったが、最後に渾身の一撃で試合を決めたところは流石だった。